いろいろな社会課題を自分ごととして捉え、身近なところから取り組むことによって、持続可能な社会をつくっていこうとする学習や活動のことをESD(持続可能な開発のための教育)と呼んでいます。
さまざまな分野で、現在や将来の人々が暮らしやすいまちにしていこうと、多くの方が市民活動をしています。自分の関心のあるテーマで、仲間と一緒に、楽しみながら……一人ひとりの活動が、「持続可能なまち日進」の実現につながるESDなのです。
日進のこれからを、多くの市民のひとつひとつの思い、活動で創っていきましょう。今回は昨年6月にお伝えした特集の第2弾として、ESDに取り組む2つの市民活動団体を紹介します。
~ 生きぬく力をつけるために ~
「火が起きたんです。彼はよく頑張りました」そう誇らしげに語るのはNPO法人『海賊船』(以降『海賊船』)理事長の川合英治さん(74歳 折戸町在住)。『海賊船』の自由制作工房に通う少年は、試行錯誤を繰り返すこと3か月。本を読んで研究し自力で火起し器を完成させた。
日進駅から徒歩10分程の折戸町の閑静な住宅街にある『海賊船』には、週末になると子どもたちのモノづくりを楽しむ姿がある。
1977年、川合さんは大学時代の仲間と現在地に工作学校を設立した。「子どもたちの教育環境を何とかしたいという思いがありました」。
「詰込み型の教育では、厳しい社会でやっていくことは難しい。自分で考え、失敗しても立ち上がる力をつけることが子どもの成長には必要だ」と感じていた。
美術教員だった川合さんはモノづくりの過程を通して、子どもたちが達成感と自信を味わうことで、生き抜く力をつけようと考えた。
~ 持続可能な航海これからも ~
『海賊船』の工房では親子で協力して作り上げるコース、材料や時間の制限なく自由に作れるコース、誰でも利用できる開放日などがある。
「与えない・待つ・制約しない」が『海賊船』の理念。大人が教えてやってあげることは簡単だが、それでは考える力は養えない。自分であれこれ考え、失敗を繰り返しながら完成させるその過程は子どもたちの宝となり力となっていく。工具も危ないから使わせないではなく、どのように使えば安全なのかを教えている。その理念は41年間変わらない。
自由な発想のヒントとなるようにとアジアやアフリカ、中南米などを巡り集めた『世界の手づくりおもちゃ館』やプレイスペース、アスレチックスペースなど館内のいたるところに創造のヒントが満ちている。おもちゃ箱をひっくり返したようなこの場所にいるだけでワクワクし、創造意欲がわいてくるようだ。
工房のスタッフは、保育士や小学校・大学教員、学生など様々。川合さんの教え子もたくさんいる。人手が足りなくて困っていると聞いて子どもの保護者がスタッフになったり、教え子がホームページを作ったりしている。ホームページが充実してきたことで来館者は増えているそうだ。
「『海賊船』が続けていけるのはこうやって支えてくれる人たちのお陰。41年間継続してきたことが『海賊船』の実績で誇りです」。
時代が変わり、社会環境も大きく変わってきた中で、41年間継続することは容易いことではなかったと思う。子どもたちの教育環境を変えたい思い、ぶれることのない理念、周囲への感謝の気持ちが人を動かし、活動を支えてきた。
「継続することが貢献だと思います。次世代につなげていくためにも『海賊船』の活動に共感してくれる方が仲間に加わってくれるといいんですが。この日進が子どもたちにとって楽しめるまちであるようにと願います」
ESDという言葉が生まれる前から41年という長い航海を続けている『海賊船』。時代が変わってもこれからもずっと、自ら考え創造する人づくりの航海が続いていってほしいと思う。
NPO法人海賊船 世界の手づくりおもちゃ館
開館日 金・土・日・祝日
〒470-0115 日進市折戸町枯木21-87
電話・ファクス 0561-76-6879
メール office@npokaizokusen.jp
ウェブサイト http://npokaizokusen.jp
<身近なつどいの場を>
「自分たちも楽しいことをしないと周りも楽しくない」と語るのは、『梅森台「わ」の会』の西中孝滋さん(37歳・梅森台在住)。
西中さんは「良かったな、居場所を作っといて」と、定年になる約30年後に言いたいと笑う。会社と家の往復の毎日、このままでは定年後、周りに知り合いはおらず、淋しい未来になると想像したのは自治会長を経験した時だった。
その際「身近に集まれる場所がない」という声を聞き、米づくりをする仲間と「わ」の会をたちあげ、「ほっとカフェ梅森台」を始めることにした。毎月第一日曜に開催されるカフェの参加者は高齢の方が多く、仲間が仲間を呼び、今では20~30人にも及ぶ。
今後は子育て世代のお母さん達が友達同士で来られるようになるといいという。
<異色のコラボで多世代をつなぐ>
「わ」の会は、地域とも信頼関係でつながっており、自治会との協力関係は強い。
自治会が毎年行っていた餅つきのイベントは、梅台祭として生まれ変わり、運営から準備まですべて「わ」の会が取り仕切った。お酒やバルーンアートといった人を集める仕掛けをして150人くらいの参加者が集まった。
また、防災×ビアガーデンという、一風変わった企画も自主防災会とのコラボレーションで実現。防災の大切さを知る企画の参加者には、午後のビアガーデンで使える、ビールやお菓子の券が配布された。
イベントやほっとカフェに来る人の「ありがとう」「この場が楽しい」という言葉や、知らない人同士が友達になったり、隣近所の顔が見えることで地域がつながってきていると感じるという。
「近所の理解も得ながら、子どもやお年寄りといった地域の人たち、一人で悩んでいる人を孤立させないで出て来られるイベントになればいいな」という西中さんの言葉に、これからの地域の広がりが期待できると感じた。
<地域がひとつの「わ」に>
若い世代に地域の大事さを伝えていくという課題もあるが、無理をせず継続することによって地域がひとつの「わ」になればいいと展望を語ってくれた西中さん。遠くない将来、世話役として若い世代をささえていきたい、人は大事にすればついてきてくれると語るまなざしは強かった。
「わ」の会は、西中さんが自治会長を務めていた時の仲間や子どものいる親同士の仲間がさらに加わり、やりたいことができる環境がつくられてきている。自分たちのできる範囲を考えて、やりたい事を楽しむためにどうしたらいいかといったことを日々話し合う。そんな定期的な対話と楽しむ姿勢から新しいアイデアやつながりは生まれてくるのだろう。
地域での交流の場を通して継続していこうとする「わ」の会の活動は、持続可能な地域のありかたの素敵な例だといえるのではないだろうか。
梅森台「わ」の会 ほっとカフェ梅森台
場所 梅森公民館〒470-0115
日時 毎月第1日曜日 午前9時~11時