昨年建て替えから10年になる日進市立図書館。気軽に立ち寄れ、知識や情報の集まる場所として、市民が様々な議論をして「滞在型」としてつくられた。「にっしん図書館サポーターズ」は、そんな新図書館の発足とともに活動をはじめ、図書館が市民にとってさらに使いやすく、頼りになる図書館になるよう、市民の手でイベントを開催したり、図書館運営がよりよくなるための学習や話し合いをしている団体。
今回は、にっしん図書館サポーターズと図書館、市民と団体のつながり、SDGsとの関係などを、代表の酒井さんにお話を伺った。
★たくさんのイベント
現在図書館で開催されている、絵本の読み聞かせ講座や朗読劇・読書会などの様々な行事は、にっしん図書館サポーターズと図書館の協働で行われている。企画があることでたくさんの人に図書館に来てもらえる。市民の人たちに、図書館でもっと本を読んでどんどん活用してほしいという思いを込めての活動だ。
『ひょっこりひょうたん島』は「お話の夕べ」の一環として14回を迎えた。
現在は年に1回開催、これからも続けていきたいという。
キャラクターのお面をつけて演じ、20人近くの出演者があり、好評だ。
「読書交流会」は毎年第5土曜日に開催している。一つの作品を選んでみんなが順番に読んでいく輪読をして、あとで感想を述べ話し合うオリジナルの企画。
8/31(土)は、小泉八雲の『怪談』の内「耳なし芳一」を取り上げる。
読み聞かせは色々な団体がやっているが、「読み聞かせ講座」をやっているのは図書館サポーターズの特徴的なところ。今年からは「親子で楽しむわらべうた」を始め、第一回が6/15に開催された。気軽に参加できるイベントとして、「図書館まつり」における「読書交流会(三冊のおすすめ本)」や、夏休みの自由研究をお手伝いする「調べ学習お助け隊」などもある。
★図書や資料の活用
平成29年度の資料によると、年間で貸出利用者はおよそ24万件、個人利用者の貸し出し点数(AV資料や雑誌等も含む)は、およそ100万点にも及ぶ。市外からも利用される日進市立図書館にはたくさんの資料がある。子どもが毎年1000人生まれる日進だからか絵本などの貸出が割合的に多い。「愛知県の中では利用されている方だが、一般書もたくさんあるので、もっと多くの人に図書館を活用してもらえたら」。
酒井さんは、図書館がまちづくりとか市民運動の中心になることが望ましいと語る。図書館には図書だけでなく、市の情報や資料などもある。だから、資料やデータを活用して活動を頑張ってほしい、とまちづくりを担う人たちにエールを送る。
★身近な図書館・将来の図書館
自分の生活の範囲内約2km圏内にあるというのが図書館の基本だ、と酒井さん。
今は、福祉会館やプライムツリーのポストで返却できるシステムができてきた。
ネットワークがもっと充実し、誰でもいつでも使えて、質問に対して答えてくれて資料も常にすぐ提供してくれるのが図書館の素敵な未来像。
身近な場所で検索したり、本を予約して届けてもらうことができれば、今ある資料を多くの人にたくさん活用してもらえる。
図書館の役割として「保存」ということも大事だと酒井さんは教えてくれた。
将来100年先に今あるデータが使えるようにするには、保存図書館が要る。書庫を確保するために、図書館まつりなどでスペースの関係上廃棄にせざるをえない本を市民に無料で配布したりしている。
資料が必要かどうかの判断は難しい。それでも残していかないと、他所に頼らなければならないという。つまり、充実した資料がある図書館があることはとても幸せな状態だと思う。
★図書館の応援団
図書館基本計画の策定や図書館に寄り添って20年、共に図書館のあり方を考えてきた人たちの思いが今の図書館サポーターズにつながっている。図書館サポーターズの立ち上げから11年目。若い世代や男性にもっと入ってほしいという。団体のメンバーの要望に合わせて活動の時間帯を変更してきたり、メンバーの高齢化に対応している。
市民の図書館として大切なことを考え続けているから団体としての軸がブレない。より良い図書館に向けて市や図書館と協力していくことで、良い関係を築いていけているという。
全国各地に、理想とする図書館づくりのための「図書館友の会全国連絡会」という組織がある。「僕らが図書館友の会といってもいいけど、
応援をするってことで図書館サポーターズと名乗っている」。
あくまでも図書館の応援団なのだ。
★「平和の砦」〜SDGsと図書館〜
酒井さんは、図書館で勉強することで自分を育てることができる、生涯学習・一生の勉強の場として学習していけるという。
SDGsにもある「情報への公共アクセスを確保し、図書館の自由を保障」「文化」「情報通信技術(ICT)」など多岐にわたる「図書館の役割」を、図書館サポーターズは、ともに歩んで見つめ応援している。
国際図書連盟によると、図書館はすべての人へ情報と知識へのアクセスとチャンスを提供してくれるという。人々は情報を効果的に利用する能力を身に付け、生活を向上させることができるようになるのだ。
「本当に平和がなくなると図書館がなくなる」
歴史的に情報統制などが行われてきたりした時には、図書館の本が燃やされたり、隠されたりしてきたこともある。過去のデータや言われてきたことを知ると、市民運動が起こるとして国が情報へのアクセスを制限しようとしたからだ。そうなると教育も歴史も全然わからなくなる。
だから図書館があり、そこにデータや様々な立場の資料があるということはすごく大事で、図書館は平和の象徴・平和の砦・自由の砦と言われているという。
学校に行きたくない子でも、図書館に一日いることができ、情報を手に入れられる。自分の好きな本で勉強できるし、動画や映画・音楽や落語などのAV資料も観たり聴いたりできる。
図書館は誰でも無料で使えるから平等、それはとてもすごいこと。だからそれをもっと活用しないと「もったいない」と酒井さん。
★本のリクエスト
図書館では、話題の本や映像化された作品の原作や脚本なども置いてある。
図書館にある端末だけでなく、ホームページからも蔵書の検索ができる。
また、
新刊や出版されている本をリクエストすることもできる。
それに対し、選書して買ってくれたり、所蔵していない本は他の図書館から取り寄せてもくれる。有料になる部分もあるが、本来は世界中からでも本を借りることができるシステムだという。
図書館が選書をするが、そこに市民の要望が入っていると図書館の品揃えは変わってくる。
自分の書斎だと思って利用したらいいと酒井さん。自分のリクエストした本が所蔵されると図書館への愛着も増すだろう。
酒井さんのリクエストで蔵書になった本がある。「北の国から」などのドラマを手がけた脚本家、倉本聰さんの「倉本聰戯曲全集」だ。気持ちや背景が書いてある小説と違い、戯曲では俳優が演じる部分が多いので、背景などト書きに簡単に書いてあることから想像しなければいけないが、想像の楽しみは広がる。
「古くすぐれた本は書庫に入っている」。
ロングセラーや古い本は書庫にあるから、並べてある本の中にはない、だから「検索」することが大事。どんな本があるのか司書さんに聞いてみるのも良いかもしれない。
図書館の使い方は、人それぞれだが、市民のための大切な場としてあり続けることはとても大事だと感じた。そんな市民のための図書館に向けて運営のサポートをしてくれる図書館サポーターズ。彼らとともに、私たちのまちの図書館を大事にしてみませんか。